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原子力空母を巡る住民投票条例の行方


 いよいよ住民投票条例を審査する臨時市議会が来週5日から3日間開かれます。
 市民の直接請求による議案ですが、制度上議案提出者は市長となります。原子力空母の受け入れをスムーズに行うことが今期の最大の仕事であると思われる蒲谷市長にとって最も不本意な条例案でしょう。
 早速次のような市長の意見書が1月31日各議員に配布されました。議会でも自ら読み上げますが、まずはその要旨を報告します。
市長意見書要旨
 市民が権利として有する「直接請求」制度については尊重すべきと認識しているが、市町村合併のように自治体の意志によって決定できることは住民投票が有効な手段として考える。しかし安全保障に関する外交については憲法により国の役割と規定されており、地方自治体がこれに関与し又は制限するようなことは認められない。従ってそのような条例を制定することはできない。
 港湾協議については、市長は港湾法に則り適切に処理すべきであり、住民投票の結果をその事務に関し尊重するよう求めている条例は法に反する。
 原子力空母の配備は国が判断することであり、横須賀市が決定権を持たない問題について住民投票条例はなじまない。
 私は日本の安全保障を守る観点から通常型空母の配備の可能性がゼロであることをふまえ、配備をやむを得ないと昨年六月の議会で発言した。
 今後も市民の安全安心を第一に考え皆様のご支援を頂きながら国及び米国と協議を重ねて参ります。ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。
異議あり
 ご理解の程宜しくお願いされませんので、以下私の意見を述べます。
 まず私は市長の考えと根本的に異なる考えをもち、直接請求する為の署名受任者となりました。
防衛、外交は国の重要専権事項であることは論をまちません。しかし日米安保条約による提供施設をもつ自治体に暮らし、原子力空母に心配する人、又他国の軍艦であり、圧倒的攻撃力を持つ空母の配備そのものに反対する人など市民は様々な考えをもっています。市民にとり重要な案件について主権者に意志を表明して貰う事は民主主義の原則と思います。
 市民の何割が配備反対か、また賛成かをこの際、投票によってハッキリさせ、その意志を日米政府に示し、必要な交渉を行うのが市長の努めであると思います。
 港湾協議についても仮に反対が過半数を制すると予測して法に反するとするなら、あまりに弱腰です。市長は意見書の後段で日米安保論者として原子力空母の配備やむなし論を展開しています。仮に反対票が多くても、自らの信念と法解釈の元に行動すればよいのです。そうなれば有権者は次の市長選挙で判断します。
 なおこの思想なら始めから「原子力空母の危険性は少ない、米海軍の空母保有状況から原子力空母は受け入れざるを得ない」と明確に主張すれば良かったと思います。市長選での公約は選挙戦術であったとしか思えません。これは小泉総理の下で活動してきた自民党にも言えることです。何故、よって立つ信念、政策によって行動しないのでしょうか。日和を見ているようで不快です。
 私は投票条例を可決しても小泉議員を圧勝させた横須賀の選挙民ですから、いざ投票になれば受け入れ賛成派の方が反対派より多いと思っています。それでも何割かの反対の市民がいることをこの際はっきり日米政府にしめし、市民の意志を表わせる保障をすべきとの立場です。
議会の態度
 大方の議員が市長「与党」を自認する横須賀市議会ですから、今回も圧倒的多数でこの直接請求を否決することでしょう。3年半前美術館に関する住民投票条例案を私達無所属4人で議員提案をしたときも否決しました。
 地方議会は議院内閣制で議員の中から市長を立てているわけではありません。市長と議員は同じ有権者が別々に選んでいるのです。まず議会は圧倒的権限をもつ市長をチエックする機関としての役割を期待されています。議会が常に市長と同じ判断をするなら地方議会は参議院以上に不要な機関となります。
また今回旧社会党系の議員がこの請求に対し、私ともう一人を除いて動きが鈍いどころか、反対しようとする態度に失望しています。少数意見に耳を貸すのが、社会党の存在意義であったはずです。こういう態度に投票条例制定運動をしてきた労働団体や関係者はどう対応するのでしょうか?
議員の動静をよく見て下さい
 ところで署名の受任者になっている私の所にも、どこかの動員運動か、何通もの要請が印刷のハガキで届いています。各議員に要請行動するのは結構ですが、その際はどの議員が署名の受任者になっているか、どの会派が、そしてどの議員が反対に回るのか、組織は明確に情報を出して欲しいと思います。又葉書を書く人は議員がどう行動しているかよく判断して宛名を書いて下さい。
 民意を反映しない議員と一緒にされるのはハッキリ言って不愉快です。私の所にハガキを送らないように願います。なお激励や連帯の挨拶なら喜んでお受けします。
 何れにしても来週8日には結果が出ます。署名の受任者になった7名(私達無所属3に共産2ネット1研政1の計7人)に+して何名の議員が賛成するのか、しっかり見届けて欲しいと思います。
 くれぐれも、議員の賛否をみてください。議員は賛成か反対かを議会で表すのが仕事です。会派の縛りとか組織を理由に言い訳する議員がいたら眉に唾して下さい。自らの基本認識を縛る会派になど、いない方が民意を議会で表せるからです。政党でもない議会内会派は多数決主義をとる議会において本来自分の政策を実現するために、便宜的に集まるだけのものです。4年前まで12年間会派に所属していたのでよく分かります。
 8日の夜にはテレビ、ラジオで翌日には各紙で大きく報道されると思いますが、マスコミが報道しない所などは又来週報告します。

# by ichiyanagi25 | 2007-02-03 00:00

議員の節操・信念を考える

郵政民営化反対の本質を葬る復党劇
 昨年の衆院選挙で郵政民営化法案に反対し刺客まで送られながら、当選してきた元自民の無所属議員11名がこぞって「踏み絵」をふんで自民党への復党を認められました。筋を通して土下座復党に屈しなかったのは平沼赳夫議員だけでした。
 郵政民営化と横須賀市立美術館、課題は違いますが私も大きな会派を脱退し、そのことで連合から除名された経過をもつことから、今回の復党劇に以下のような感想を持ちました。
 小泉氏に刺客を送られながら地元有権者の支持を得て勝ち抜いてきたのに、自民党に「土下座」する11名には信念、節操の点で残念と言うより愛想が尽きます。なぜなら郵政民営化法は国民の為でなくアメリカの為との説明の方が合点がいくからです。
 郵政対米民営化の本質
 昨年夏、衆院での投票時「アメリカのための郵政民営化には反対」と叫んだ小林興起議員の所にはイの一番に、前総理を「あなた」と呼ぶ小池百合子氏を送って葬ったことから、私は疑問に思いマスコミでは報道しないところを、何冊かの本を読んで探ってみました。すると郵貯簡保の資金を戦費調達等のためにアメリカに環流させる為との指摘に出会いました。アメリカの対日年次改革要望書はクリントンが1993年に宮沢首相に飲ませた事から始まりますが、95年の要望書に郵政民営化が載ります。この時アメリカは6年後、まさか小泉氏が大化けして総理になるとは思っていなかったでしょうが、期せずして郵政民営化を片方は遠吠えし、片方は水面下で強力に求めだしたのです。
 アメリカは今、自国民を潤す為には、時々戦争を起こし、作りすぎた兵器の一掃をして産軍複合経済を動かす必要があるそうです。悪の枢軸と名指したところで戦争を仕掛ける筋書きと言います。なるほどそう見ると、点と線が結びつき合点がいきます。共和党でも民主党でも郵政350兆はアメリカの為に欲しいので民主党に変わったブッシュ(元締めは財閥)政権も小泉氏に民営化を急がせ昨年の選挙に至ります。
 昨年の選挙宣伝費はアメリカから日本のマスコミに千億単位で環流されたと言われます。そのため?か「日本の民放は電通に支配された」と言った評論家の森田実さんは、「その日からテレビから完全に干された」と著書で語っています(アメリカに食い尽くされる日本-日本文芸社)。
 そういえば復党組の最長老、堀内光雄氏も著書「自民党は殺された!」-WACで郵政民営化はアメリカのためと、民主党桜井議員の委員会質疑を取り上げ指摘しています。同著では小泉手法について怒り顕わにしていながら、簡単に転びバテレンになるとはがっかりです。齢70後半の堀内さん、次の選挙での議席確保を恐れず本音を語って欲しかったですね。本音を語る政治家が出なくなるのは国民の損失です。石油公団改革をした議員がこれだから、政治家が信用されなくなりポピュリズム政治が跋扈するのです。 引用はこの辺で終わりますが、小泉氏が導入した、タウンミーティングの「やらせ」も安部総理になってから報道されだしたこともマスコミ支配論と合点がいきませんか。
 政治家の信念、節操は市議でも国会議員でも同じ
 再び踏み絵の話しに戻りますが、平沼さんとは思想的に殆ど相容れないものの、信念を曲げない点は政治家として高く評価します。ならば今唯一、信念を貫く議員として注目されているだけに反対理由をもう一度明確に言ってほしいのですが、言わないのは時期を見て復党のためなのか、あるいは更に恐ろしい踏み絵があるのでしょうか。
 振り返りますと横須賀市議会にも美術館見直し、あるいは反対と言っていたのに、いつの間にか賛成に回り、更には美術館推進派の蒲谷市長支持に回った議員がいます。市議会の場合、現市長につかず、美術館批判をしても殺されたり干されたりする事はないのですが、なぜ美術館は要らないとする市民の代表とならないのでしょうか。
 確かに政策の違いにより大きな政党や会派を抜ける事、また独立思考で支持団体の意向に反し信念を貫くことは議員として勇気の要ることです。しかし選挙の時、有権者に向けて発した言葉や公約を反古にしないことが、議員、政治家に求められる、最大の倫理観であると思います。信念を貫く議員を有権者が評価することこそ議会を変える一歩だと思います。是非そのような政治風土を次の選挙で作って頂きたいと思います。
 私も3年半前、美術館建設を巡り対立し研政21(旧社会と旧民社系議員が連合を軸として結成した会派)を脱会し完全無所属、英語で言うインデペンデントとなりました。会派離脱により地域連合などから「除名処分」を受けましたが、私としては次の選挙のことだけ考えて信念を曲げ、会派に残ることは出来ませんでした。
 独立した事によって選挙時の公約である美術館反対を貫き、昨年の市長選挙でも美術館はいらないとする有権者の声を表すために、反官僚の木村さんを若手2市議と同年代の1人の県議のみで支持し大善戦しました。
来年は「現状打破」を目指す多数の新人が立候補します。昨年蒲谷候補に入れなかった有権者の皆さんは是非、左右の既得権団体に支配されない独立派議員を選んで、議会を変え、蒲谷市政を厳しくチエックする議会に変えて頂きたいと思います。但し新人も、これまで当選すると既成会派に取り込まれる人がいた事から、美術館や蒲谷市政に対する意見を明確に出さないと、有権者は判断に困ります。自らを律する意味からも抽象論だけでなく具体論を表明すべきです。
 筋を通して独立(インデペンデント)派議員として行動します
 私は今、既得権団体とは一切しがらみをもたない独立中堅議員です。また現市長にすり寄らない数少ない中堅でもあります。来年の選挙に当たってはハコモノと国の言いなり市政にノー、そして成熟の時代、環境再生や医療福祉の充実を求める市民の皆様方と連携を深め、真の独立市民派議員として戦う決意です。同時に新しく当選するであろう現市政と市議会を変えて行こうとする人たちと、連携し議会を変えたいと思っています。 宜しくご理解の程お願い致します。
  横須賀市議会議員 一柳 洋

# by ichiyanagi25 | 2006-12-03 00:00

蒲谷市長による無気力市政

-こだわりのない市長のもと怠惰な市政が続く横須賀のこの頃-
                       
 第3回定例会9月28日の本会議で、今年、猿島は財務省から無償譲渡を受ける大切な年なのに、「トップの無関心と担当部の無策、怠慢により全く活用策が出来ていない、何しているのか」と厳しく問いただしてから一月半たちました。そこで、その後どう対応してくれたか、確認するために猿島の会のメンバーと先週金曜日(10日)市長と会い、25分にわたって話し合いましたが、進展はなしでした。
これには率直に言って呆れます。
 あれほど完膚無き程に厳しく対応を叱責されたのに、本会議後土木みどり部職員を呼んで活用策とソフト作りの指示を出したのかと聞けば「していない」というのです。
 市議会での質疑の重さと自らの答弁責任に対する認識をかいまみた思いですが、これは議会、議員、強いては議員を選んだ有権者を軽んじた対応と指摘せざるをえません。確信犯対応とすれば見かけによらずの悪党となりますが、そうではなく対象に熱い思いがないだけと思います。意見が対立していることで議会で激しく追及された場合、考えが違うとして対応しないなら話は分かります。横山、沢田市政下でも、そんなことは何度もありましたが、それは質問者として理解できます。
 しかし猿島の活用では意見対立はなく、既に整備の方向性は出ているのです。ただ人事で不向きな担当職員を当てているから、この2年間全く無為に過ごし活用ソフトが出来ないでいるだけなのです。
 一事が万事、猿島以外でも何をやっているのか、という声は他の議員からもよく聞きます。議員だけでなく、職員や、市政に関心を持つ市民からも同様指摘を耳にします。この様な怠惰なやり方で、市長の言う「元気が出る横須賀」が実現できたら、実におめでたい話しです。蒲谷市政の1年半をみると、この人は政治家としてではなく、役人として市長をしているのだなと思います
 何事にもこだわりのない市長のもとで、市庁舎内の意識が弛緩しているように感じます。その通りと言う職員もいますし、一生懸命やっても評価されないから適当にやるだけという人もいます。市政の停滞にどうするか市議会議員の認識が問われるところです。
 立候補者は政策提示と蒲谷市政の評価を
 来年4月22日に市議選が行われることが、先月臨時国会で決まりましたが、例年になく多数(再チャレンジ組を含め20数名の新人が立候補予定)が立候補するようです。そこで、立候補者は蒲谷市政に対し、どう向き合い、何を変えようとするのか、しっかりメッセージを出して欲しいと思います。
 今回は保守系の新人立候補者が目立ちますが、単なる保守系議員の入れ替えで当選したら蒲谷「与党」になってしまうなら、今の市政を変えることは出来ません。この様な市政を変えていくには、市長提案を吟味し、受け入れられない議案や予算に反対するくらいの気概をもつ人に変わらないと、横須賀は変わりません。現職も含め立候補者はまず、蒲谷市政を支持するのか、しないのかを有権者に明らかにする事が、有権者にとって分かり易い判断材料になると思います。

# by ichiyanagi25 | 2006-11-03 00:00

きっこのブログを読んでみて下さい


昨晩友人が「きっこのブログを読んでみて」と話してくれたので今朝読んでみました。
 耐震偽装事件で知られるイーホームズ社長の藤田氏がおこなった告発記者会見を東京新聞以外、活字メディアもテレビも一切取り上げない事が、藤田氏自身の公開メッセージで明らかにされています。
 その中の一文を以下引用紹介します(転載OKとなっています)。

私は、川崎市と国交省建築指導課の罪は、建築行政を行なう者自らが隠蔽したとして、小嶋氏より遥かに大きいと思います。イーホームズでは、2月に構造計算書の偽装を認識し、川崎市と国家に通報しています。しかし、隠蔽されてしまいました。強制捜査と私の逮捕で追求も出来なくなりました。
 現段階でも、非破壊検査を、国家が関与しない公正中立な第三者機関等に徹底的に行なわせるべきです。99%以上の確率で偽装マンションのはずです。この偽装を生み出したのは、川崎市と国家官僚です。彼ら公務員が偽装マンション(小嶋氏流に言わせるなら、殺人マンション)を、生み出したのです。法の衡平を重視するなら、小嶋氏を逮捕した以上は、川崎市の倉形課長、国土交通省の当時の北側一雄大臣、佐藤信秋事務次官、山本繁太郎住宅局長、小川富吉建築指導課長、田中政幸課長補佐、高見企画調査官も同じく逮捕するべきです。この者達は、小嶋氏より、建築行政のプロとしての立場からも、遥かに悪質です。そして陰湿です。

 メディア支配の構造について考えて頂くために、「きっこのブログ」をお読み下さい。 それと併せて先月読んだ「アメリカに食い尽くされる日本」の一文を紹介します。皆さん少し前まで評論家の森田実氏がテレビによく登場していたこと覚えておられると思いますが、この頃全く見なくなりました。その理由を、ご本人がこう語っています。
森田 ウオール街から帰ってきた友人が電話をくれました「アメリカの保険業界中心の経済界が、日本の広告社に金を出してある広告を依頼した」というのです。それは日本人に民営化が善だと信じさせる広告費として日本の巨大広告社(電通)に依頼されたのです。(注;これは昨年の郵政選挙時のことです)
森田 電通批判の代償は小さくありませんでした。あるテレビ局の幹部からは「森田さんは電通批判というマスコミの最大タブーを口にしてしまいました。今後森田さんにマスコミの仕事はなくなります。残念です。さらばです」と言われ、そのとおり各テレビ局からの出演依頼はなくなりました。
「アメリカに食い尽くされる日本」(日本文芸社刊)より
 メディア支配がなぜ行われるかと言えば、国民のマインドコントロールしか考えられません。小泉氏に続く安倍超親米政権のありようも、よく考える必要があると思います。またイーホームズの藤田さんの思いを共有したく敢えて紹介しました。一柳
(蛇足ですが「きっこのブログ」はどの検索サイトでも簡単に検索できます。)

# by ichiyanagi25 | 2006-10-21 00:00

小泉総理靖国参拝に思う


小泉総理が17日靖国神社を参拝したしました。
 一月前の選挙時は靖国は争点にしないと言っていたのに圧勝を受け、すぐ参拝するのは彼らしいやり方だと思います。しかし靖国参拝こだわる小泉さんの昭和史観、戦争観は私は相容れません。
 私は先の選挙期間中の9月4日、『靖国は争点にしない』との言葉が気になり30年ぶりに靖国神社に行ってみました(30年前は靖国神社国家護持法案が再三国会に上程されていた時期)。最初に行った時から30年、この間昭和史、日米戦争に至った経過など多くの書物を読み、政治家や歴史家達と論じ合ってきましたので、今回は小泉さんの思いは靖国の何所にあるのか改めて確認に行きました。
 靖国神社には遊就館という軍事博物館があります。そこで映画を含め3時間半程見学をしました。玄関ホールには零式52型戦闘機また艦上爆撃機彗星などが展示されています。猿島に4つ砲座が残る8サンチ高角砲の本物も展示してあります。兵器マニアにはそれなりの興味を引きますが問題はその歴史観です。
 そこで日中戦争から太平洋戦争に関してどの様な展示をしているか注目してみました。 先の大戦は靖国的には当然大東亜戦争という表現になります。遊就館のパンフレットのQ&Aにはこうあります。『戦争は本当に悲しいことですが日本の独立を守り平和な国として回りのアジアの国々と共に栄えて行くには戦わなければならなかったのです』。
 そうでしょうか。日清日露の戦争の後は当時世界常識であった列強が植民地を確保すると言う思想で台湾、朝鮮を植民地にして更に中国までを支配下に納めようとして泥沼の戦いに引き込まれ、その課程で傀儡国家満州国を作ったのが史実でしょう。これを「アジアの国々と共に繁栄を考えてのことだ」としてアジアの国々を説得できるとしたらおめでたい話ですが、これが靖国の歴史観なわけです。アジアのみならず世界は靖国神社の本質をみているから総理の参拝に同意しないのです。
 さて遊就館には大東亜戦争というコーナーがあります。真珠湾攻撃で米戦艦が濛々たる煙の中で擱座する写真の解説には『ルーズベルト大統領の陰謀により日本は開戦に至った』とあります。たしかにルーズベルトがパープル、マジックで暗号を解読し真珠湾攻撃を察知していたのは事実です。また開戦直前の日米交渉やハルノートにしても日本を挑発していていることは歴史を学べばわかりますが、冷静に外交、戦争を論じればそれに乗った日本の陸海軍部と政府閣僚が余りにお粗末であったと言うことです。
 11月に親友ブッシュさんが訪日するそうですが、ぜひ総理はこのコーナーにお連れして感想を求めたらと思います。マスコミもこの突っ込みをブッシュ大統領にしてみたらどうでしょう。
 命を尊ぶ軍人精神とは
 小泉さんは戦没者(英霊)の慰霊のために靖国に行くとの趣旨の発言をしていました。また特攻隊のことを思う自らが励まされるとの発言もしていました。ここにもすごく違和感を感じます。
 話がすこしそれますが敗戦60年目の今年、芙蓉攻撃隊の存在を知りました。この部隊はフィリピン敗退の後、生きのこり搭乗員を集めて昭和20年1月に作られた夜間攻撃を主任務にした部隊です。その飛行長美濃部正少佐(海兵64期)は部下思いで立派な海軍士官でした。
 美濃部大佐の立派さは沖縄戦の前に「貴官の部隊からも特攻機を出せ」と言われたとき抗命罪覚悟で幕僚達に向かって発した以下の発言に現れています。「全機特攻そして練習機まで特攻に出すとは何事ですか。全部グラマンに撃ち落とされます。ただ無駄に若者を殺しに出すのは作戦ではない。あなた方は対空放火の弾幕をくぐった経験がおありか。もし練習機を出して効果があると言われるなら、まずあなた方が飛んでみたら如何ですか。私が零戦一機で全部たたき落として見せます」。と発言しています。意を決した剣幕と「ならば貴官が飛んでみたら」と言われるのが嫌な幕僚達は黙ってしまったそうです。そして芙蓉部隊は終戦まで一機の特攻機を出さずに正攻法の攻撃を続けました。
 この様な指揮官の存在を知りこれこそ真の軍人としての勇気だと感じました。また部下思いの中堅上級将校が100人いたら無駄に死んだ兵士はもっと少なくてすんだでしょう。戦後、美濃部少佐は「特攻をエモーショナルに語ってはいけない。あの愚かな作戦とあの作戦によって死んでいったパイロットは全く次元が違うことも理解しなくてはいけない」とインタビューに答えています。更に美濃部少佐は1997年、81才で亡くなりますがその1年前の著書では「(高級軍人達が)特攻の濁流に若者達を投じたことが許せなかった」と書かれています。
この様な立派な軍人の存在が余り知らてれいないことも問題だと思います。自民党に美濃部少佐をたたえる人が少ないのも気になります。小泉さんも全く興味がないのか知らないのか美濃部のみの字も言いませんね。
 靖国神社は国民の死を悼んでいるのか
 再び遊就館に戻りましょう。沖縄戦の紹介でひめゆり部隊の戦没少女を祭っていると有ります。その戦争犠牲者の脇には持久戦に持ち込むため首里決戦を放棄して摩文仁撤退を命じ沖縄住民10万人を道ずれにした牛島司令官と長参謀長が祭られています。さすがに自決せず米軍に囚われた八原高級参謀は祭られてないようでしたが、長参謀長はいわゆる陸軍革新派で五一五事件の前年クーデターを画策した国士を気取る陸軍参謀です。首里決戦を八原参謀に封じられて摩文仁の洞穴に入ってからは「自決はまだか」と自決するまでウイスキーを煽り作戦指揮を投げ出した言われています。また首里城にいた頃は酒はもちろん琉球王朝系の女性をはべらかしていたともいわれるから何をか況やです。問題は国民の命を守らない腐った軍人達とその犠牲になった国民を一緒に祭っていることです。この事実を知り展示を見れば沖縄の人ならず憤激の思いに駆られる人も多いでしょう。
 A級戦犯合祀者でも14人のうち松岡、広田らシビリアンはともかくとして将官達は戦陣訓を守らず自決しなかった指揮官です。特に東条元首相は多くの将兵に戦陣訓を墨守させあたら降伏を許さず多くの兵士を死に追いやった一大責任があります。生きて虜囚の辱めを受けずと命じた陸軍大将が、逮捕収監に来た米兵を待たせピストル自決をはかった時は「気が動転し」弾が心臓を外れたとのことです。何とたるんだ軍人精神でしょう。虜囚の辱めは米兵の輸血で一命を取り留め「不当」なる東京裁判を受けて存分に果たしました。
 今年NHKBSで「あの時」という昭和20年をふりかえる番組が放送されています。東条逮捕の9月には作家高見順の日記が紹介されました。曰わく「自殺し損なったそうである、なぜ阿南陸省のごとく日本刀で古式に則って自決しなかったのか」と憤慨しています。この時多くの復員兵士は高見と同じ思いであったでしょう。
 自決も出来ないで権力だけ振り回した軍人達を「昭和殉難者」として祭る靖国ですがエリートはいざというとき責任を取るべきなのです。
 情けない高級職業軍人達を合祀し一方的歴史観を押しつける神社自体問題であり、私はお参りしない自由を守りたいと思います。まあ靖国神社は現在一宗教施設ですからカルト的に何をお言うと勝手ですが、一国の総理たるものが戦争責任論を自覚せずお参りする事は許しがたい。中、韓が抗議する以前に同じ日本人として許し難いのです。
 責任を取らない高級職業軍人
 今年はまた小泉さんが感激する陸軍特攻基地、知覧にも出かけてみました。
 知覧特攻平和会館には17才から20代前半の若者で殆どしめられる特攻兵の写真と遺書が展示されています。たぶん検閲済みであろう遺書が多いのですがそれでも遺書を読むと目頭が熱くなります。しかし写真と階級をよく見ると死んだのは2階級特進での尉官クラス、要するに若者ばかり。左官は少佐がちらりほらりで陸士(士官学校)、陸大出(陸軍大学-超エリート)の高級軍人は全くと言っていい程いません。旧軍の本質見たりです。
 特攻を命令した将官や佐官クラスの軍人達は見送りの際「後から我々も行くから」と言ったのが多いそうです。しかし大西海軍大将のように「旧部下の英霊とその遺族に謝せんとす」として腹を切った高級軍人はごく僅かで、後は口をぬぐって生き延び、かつ軍人恩給を貰って講和条約後は臆面もなく彼らを英霊と祭り上げ余生を全うした卑怯かつ無責任な高級軍人が何と多いことでしょうか。
 先の大戦で殉難者として最大級の敬意を払い慰霊しなければならないのは沖縄サイパンなどで死に追いやられた民間人、満州に置き去りにされ死んだ人、空襲犠牲者や原爆犠牲者そして満足な護衛もつけられず魚雷で沈んだ船員たち、その後に徴兵で取られた兵士たち。高級職業軍人は末席でよいのです。軍隊は国民の生命と財産を守るために存在しなければなりません。靖国はそれが全く逆です。
戦争責任を問い何所が間違ったのかを把握し、今日に活かさなければ将来同じ過ちを繰り返します。もちろん小泉さんにはこの私の思いは通じないでしょうが。

# by ichiyanagi25 | 2006-10-21 00:00